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http://www.aaas.org//news/releases/2007/1220breakthrough_jp.shtml


Scienceが選ぶ2007年の科学的進歩ベストテン-第1位は「ヒトの遺伝的多様性」

2007年、研究者達はヒトの個体ごとに異なるゲノムの多様性に感嘆し、このような多様性が疾患や個人的特徴において果たしている役割を理解し始めた。Scienceとその発行元である非営利団体、米国科学振興協会(AAAS)は、「ヒトの遺伝的多様性」を2007年の最もめざましい進歩に選び、他の9件の素晴らしい業績と共に2007年の科学的進歩ベスト10に選出し12月21日号に発表する。

「我々はここ数年間、ヒトはお互いにどれほど似ているのか、さらにはほかのサルとどれほど似ているのかについて延々と聞かされ続けてきた」と今回の選考の責任者である物理学部門の副編集長(deputy news editor for physical sciences)Robert Coontzは述べている。「2007年、いくつかの分野での進歩も手伝って、個人レベルでもDNAにどこまで差があるのかが初めて明らかになった。これは、これまでの概念を大きく変えてしまう発見であり、医師の治療方針から我々が自分自身についてどのように考え、またプライバシーをいかに守るかに至るまで、あらゆることに影響を与えるだろう」。

個人のゲノム数名分の塩基配列が既に決定されている。技術の進歩に伴って、たくさんのヒトが自分のゲノムの一部あるいはおそらく全部の塩基配列を知るようになり、それによってどの病気に対するリスクが高いのかを知ることができるようになるだろう。

ヒトゲノムの塩基配列が決定されて以来、生物学者達は塩基個レベルの極めて小さな違い、つまり一塩基多型(SNP)の一覧表を作成し続けている。このような多様性は、2007年のゲノムワイド関連研究と呼ばれる12件の研究プロジェクトの重要なカギであった。これらの研究は、数千人を対象に何らかの疾患を持つヒトあるいは持たないヒトのDNAを比較し、どの小さな遺伝学上の変異が病気のリスクをもたらしているのかを調査したものである。この情報のおかげで今年、研究者達は2型糖尿病に関わる遺伝子など、病気に関連する遺伝子を発見することができた。

ゲノムワイド関連研究のおかげで、心房細動、自己免疫疾患、双極性障害、乳ガン、結腸直腸ガン、1型および2型糖尿病、心疾患、高血圧症、多発性硬化症および関節リウマチなど、たくさんの疾患について新たな情報を得ることができた。

また2007年には、生物学者達は、DNAに含まれる何十億個もの塩基のうち数千~数百万個が、二、三世代の交替のうちに失われたり増えたり、あるいは複製されたりして、遺伝的活動が変化してしまうことを知った。これら「コピー数多型」の効果により、でんぷんが豊富な食物を摂る民族は、狩猟採集民族と比べてでんぷんを消化するための遺伝子を多く持つようになった。遺伝学者達が自閉症の子供とそうでない子供を調べたところ、自閉症のリスクを増加させるDNA修飾を新たに発見することができた。

Scienceが選ぶ2007年の科学的進歩ベストテン第2位は、細胞を再プログラムする技術である。今年6月、日本と米国の二つの研究チームが、卵子や精子を含む体内のあらゆる細胞を作るために利用可能な「人工多能性幹(iPS)」細胞をマウスの皮膚細胞から作成したと発表した。これにより、iPS細胞は胚幹細胞と同じ能力を持っていることが示された。11月には、両チームがヒト皮膚細胞からのiPS細胞作成に成功したと報告した。この研究のおかげで、幹細胞研究を取り巻く科学研究や政策が変化すると思われる。

「ベストテン第1位と同じく、細胞の再プログラム化も、あとわずかなハードルをクリアすれば生物医学分野に新たな道を拓くことになるだろう。これをベストテン第1位に選ぶかどうか迷ったが、遺伝的多様性の方が動きが早く、破竹の勢いを見せているため、今回はこちらを選んだ」とCoontzは述べている。

その他の注目に値する研究は以下の通り。

Tracing Cosmic Bullets(宇宙の弾丸を追跡): 地球の大気に衝突してくる宇宙線は活動銀河核が集積する領域からやってくるらしいことが、アルゼンチンのピエール・オージェ観測所の研究者達から報告された。宇宙線の加速はブラックホール周辺の磁場を通過することから起ると考えられている。

Receptor Visions(受容体の構造を解明): β2アドレナリン受容体、すなわちホルモン、セロトニンその他の分子からの重要なメッセージを伝達することでヒトの体内のシステムを管理しているGタンパク質共役受容体の構造が突き止められた。抗ヒスタミン薬からβ遮断薬に至るまで、多くの薬剤はこれらの受容体を標的としており、今回この構造が明らかにされたおかげで薬剤の改良が進むだろう。

Beyond Silicon?(シリコンを超えた素材の登場?): 遷移金属酸化物にみられる進歩は、新しい素材革命の到来を告げるものであろう。2007年に複数のチームが、酸化物のペアを同時に育て、有用な様々な電気的および磁性的特徴を備えていると思われる界面を作り出した。

Electrons Take a News Spin(電子がニュースなスピンをする): 理論および実験物理学者達は、外部電場に曝された特定の物質中を流れる時に電子が見せる奇妙な行動、すなわちつとに予測されていた量子スピンホール効果を作り出すことに成功した。もしこの効果を室温でも起こすことができれば、新しい低出力「スピントロニクス」計算装置に利用することができるだろう。

Divide to Conquer(分裂して敵に勝つ):ウイルスや腫瘍と戦うT細胞は、短期的防御、長期的防御のいずれをも担っていることが研究により明らかになり、そのおかげでワクチンの改良がなされた。分裂直後のT細胞を調べたところ、この細胞の両極に異なるタイプのタンパク質が生み出されていることを研究者達は発見した。一方の分子は明らかに「戦士」の特徴を備えていたが、もう一方にはいつの日か現れる侵入者との戦いに備えて何年も待ち続ける「記憶細胞」の特徴が認められた。

Doing More With Less(低コストでより有効な技術): 合成化学者達は、製薬および電子化合物のための有効で低コストの技術を開発した。

Back to the Future(バック・トウ・ザ・フューチャー): ヒトおよびラットの研究から、記憶と想像は、脳の記憶中枢である海馬に根差すものであることがわかった。研究者達は、脳の記憶は過去の経験を再構築し未来のシナリオを作り出しているのではないか、と推測している。

Game Over(ゲームオーバー): 人工知能プログラムの大傑作の中では、チェッカーがこれまでコンピューターによって「解かれた」最も複雑なゲームとなった。研究者達は、対戦するどちらのプレイヤーもミスを犯さなければゲームは引き分けになることを示した。

2008年に注目すべき分野は、mRNA、人工細菌、新しいコンピュータチップ素材、ヒト細菌およびネアンデルタール人のゲノム、ヒト神経回路、CERNの大型ハドロン衝突型加速器からのデータなどである。

今回の記事の報道解禁後、www.sciencemag.org/sciext/btoy2007にてビデオおよびポッドキャストも利用可能となる。

記事は www.sciencemag.org.で閲覧可能。

19 December 2007

 
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